雨が降っていた。
滝夜叉丸は倉の縁で雨宿りをしていた。雨は勢いをますばかりだ。
「どうしよう…こんなに降ったら戻るのも一苦労だ。」
なるべく濡れたくなかった滝夜叉丸は、そのまま雨がやむのを待っていた。
ざあざあという雨の中で、バシャバシャ、と誰かの足音が聞こえる。
「滝夜叉丸く〜ん!」
赤い番傘から黄色い髪がたわわになっているのが見えた。自分と同じ紫色の忍装
束に身をつつんだタカ丸がやってくるのが分かる。
「タカ丸さん!」
滝夜叉丸は思わず前へ出ようとし、爪先が雨に当たったところで引き返した。
「滝夜叉丸くん!探したんだからね!」
「私に何か用事が?」
「ううん、ただ顔を見なかったから。」
番傘が顔の邪魔をする。タカ丸さんはどんな顔をしているんだろう。
「隣、いいかな?」
答える前に軒の下に入ってきた。
番傘を振って水滴を取っていた。タカ丸の右に垂れる髪の所為でまた顔が見えな
かった。
「雨、濡れてないみたいで良かった!」
タカ丸はとびきりの笑顔で振り返った。
顔が近い。滝夜叉丸はそのことで胸の高鳴りを感じた。
タカ丸は上着を脱ぎ始めた。滝夜叉丸は少し驚く。忍たまにしては柔らかい腕が
、滝夜叉丸の腕に当たった。
胸の高鳴りを感じる。滝夜叉丸は何も言えずに下を向いた。
「ん!」
声に滝夜叉丸はタカ丸を見る。
タカ丸は番傘を滝夜叉丸に押しつけていた。
「雨!大変だからこれ使って!」
滝夜叉丸がそれを受け取ると、タカ丸は自分の上着を傘代わりに校舎へ帰ってし
まった。
タカ丸が遠くなっていく。
滝夜叉丸は番傘を開いて、ゆっくりと歩き始めた。
タカ丸さん…
なんとも言えない気持ちが、胸の中で騒いだ。