森の中に白いグランドピアノが一台あった。
アレンは近づいてその椅子に座る。
ピン
一音鳴らす。それは木々があるにも関わらず美しく響いた。
ピン
アレンはピアノを弾いた。元々弾いた事が無いにも関わらずメロディーの感覚と
指の動きがわかっていた。
森の中にこだまする旋律。それは美しくも儚く、悲しいものだった。
鳥が飛ぶ。グランドピアノの周りを旋回していた。
アレンは取り付かれた様にグランドピアノを弾く。
何かを探す様に。誰かを呼ぶ様に。
パチパチ
拍手が聞こえた。振り向くと、バンダナと眼帯をした、足首の先が無い青年が立
っていた。
「ラビ!」
アレンは椅子を倒してラビの胸の中に飛び込んだ。
「ラビ…ラビ…」
ラビは震えるアレンを抱きしめた。
「大丈夫。俺はいるさ」
ふっ と、感覚が無くなった。
ラビはいない。消えてしまったのだ。
「ラビ…」
アレンは溜まった涙を流した。