笑い声が聞こえた。
クスクス クスクス
灰色の沈黙した世界で水きり石の様に響く。
「…誰です?」
ミシェルが言うと、辺り一面が暗くなってきた。
クスクス クスクス
笑い声にミシェルは杖を構える。辺りは黒一色になった。
「今晩は、お兄さん」
シュル、と音がし、金髪で青白い肌の青年が姿を表した。
特徴的なのは白衣を着ている事と、足首から先が無い事だ。
「…幽霊?」
ミシェルが言うと、青年はハハハ、と笑った。
「そう、僕は幽霊デス。」
またシュル、と音がし、今度は白い肌の、目の下の隈が印象的な青年が現れた。
髪も服も黒い所為で闇の中にぽっかりと顔と手だけが浮かぶ。
「私達は黒の闇。」
隈の青年の言葉に、秋彦が反応した。
「黒の闇だと?」
現れた二人はクスクスと笑う。
「そう、黒の闇。君と違って負の感情を司る者。」
何がおかしいのか、二人はひそひそ話をしながらミシェルを見る。
「何か用か。」
言ったのは秋彦だ。あからさまに嫌悪感のある顔をする。
「いや、其の眼鏡のお兄さんは闇を抱えているなぁと思って。」
「そうそう、とびきりのやつをね。」
二人はミシェルを指差す。ミシェルは心あたりがあり、反論できなかった。
「うぅん、複雑デスねぇ…クスクス」
「自分じゃ知らないなんてねぇ…クスクス」
二人は逆撫でする様に言う。
「何が言いたいんですか?」
杖を握る手に力を込める。
「近いうち、貴方は絶望に満たされる。乾く事の無い絶望にね。」
「死にたいのに死ねない、永遠の絶望。」
二人はクスクスと笑う。耳に付いて離れないくらいに。
「こいつ等の話に耳を傾けるな。」
秋彦が警戒した顔でミシェルを見る。ミシェルは頷いた。
「左様なら、ミシェルくん…また近いうちに。」
「永遠の絶望を堪能してくださいね…」
クスクス クスクス…笑い声を残して二人は消えた。辺りが一瞬で灰色に戻る。
「…何だったんでしょう…」
「気にするな。先を急ごう。」
珍しく秋彦が言う。ミシェルは頷いて秋彦の後を追った。

永遠の絶望…生き地獄の螺旋…

ふ、と言葉が入ってきた。秋彦は気づかなかったようで、どんどん先に行く。ミ シェルは疑問だけを持ち歩いて行った。

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